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大人向けWeb漫画『桜の枝』
今年の春、知人が私の部屋を訪れた。朝晩はまだ肌寒く、セーターを着ることも多かったのだが、知人は花屋で桜の枝を買って、持ってきてくれた。枝には桜のつぼみがいくつかついていた。彼女が帰ったあとで、私はそれを花瓶に移し替え、自分なりに生けてみることにした。そして、しばらくの間眺めていた。枝だけでも絵になってしまうところが、やはり桜なのだな、と思った。彼女の部屋にも、もしかして桜の枝が生けてあるのかも知れない。 私は改めてお礼の言葉を彼女に伝えたくなり、電話をかけてみたが、彼女はいなかった。仕方がないので、私は窓 の外を眺めてみた。私の部屋から道をひとつ挟んで向こうの通りに数本の桜の木が見える。しかし、そこにもまだ桜は咲いていなかった。 若いころは花を見るような習慣など特にあったわけではないのに、不思議なものだ。私はそんな物思いに耽りながらウィスキーを少しグラスに入れた。夜が更けるに連れて気温が下がってきたので、私は暖房を入れることにした。そして、そうこうしているうちに、うとうととしかけた。 次の朝、私は目が覚めるといちばんに窓 の外を見てみた。しかし、こんなに寒いのに桜なんて咲いているわけがなかった。私はコーヒーを入れ、トーストを焼いた。そして、ふと昨日知人が持ってきてくれた桜の枝に目をやってみた。一瞬目を疑ったが、昨日はまだつぼみだった桜がいくつか開花していた。昨日私が生けた桜の枝は暖房で暖められた部屋の中で、一気に開花したのだ。桜の花びらはほのかなピンク色を帯びて、春がもうそこまで来ている、ということを知らせてくれていた。 その日の昼過ぎ、再び私は知人のところに電話を入れてみた。 「昨日はありがとう」と言って私は、桜が咲いたことを伝えた。彼女の部屋にも今、桜の花が咲いている、ということだった。
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